笑顔が消えた牧場に

ここでは、「笑顔が消えた牧場に」 に関する記事を紹介しています。
4月26日午前、生後8日目のハービンジャー牡馬が、亡くなりました。

あまりのショックに、弱い私は、放牧地に行けなくなりました。

仔馬の顔を見ると、あのとびきり人懐こかったハービンを思い出してしまうからです。

ブログをやっていることも、ものすごく後悔しました。「書けない・・・」

信じて預けてくださっている繁殖牝馬(母馬)のオーナーに、なんと言ったらよいのか。

茫然自失。

それは、病気でもなんでもなく、放牧中に突然起こった事故でした。

片眼を損傷してしまったハービンは、すぐに獣医師センターへ運ばれましたが、戻って来てはくれませんでした。

私が最後に見たのは、母馬のあとについて、お尻を押されながら、馬運車の箱の中に消えていったハービンです。

後ろ姿や歩きには何ら問題もなく、「助かる」といういちるの望みにすがりついていたものの・・・。

幼稚園の参観日から帰ると、待っていたのは、「ダメだった。片目だけじゃ競走馬になれないんだ・・・」と力なく言うリーダーの言葉だけ。

リーダー本人が一番責任を感じ、一番衝撃を受けていることが分かるので、それ以上、話す気にもなれず。

沈黙。

「大変なことが起こってしまった・・・・」

放牧中の事故は、これまで大なり小なり経験しています。

それらが皆、良い経過をたどってきたことで、いつしか牧場に小さな油断が生まれていたとも考えられます。

あるいは防げる事故だったのかも、と思うと、やるせなく。

そして、私の頭の中には、昨日までの元気なハービンの姿が次々と浮かん来るのでした。

キンカメ牝馬の出産時、馬房の格子戸から顔をのぞかせていたこと。

パドックで顔をなでていると、おもむろにお尻を向けてきたこと。そこを掻くと嬉しそうに鼻を伸ばしたこと。

人懐こいので、子供たちが「一番かわいい!」と、特別気に入っていたこと。

これから当然、牧場の主役になりそうだったハービン。 穴は、あまりに大き過ぎました。

布団にもぐって何も考えたくない、そんな心境でしたが、目の前の仕事や家事をこなさなければならず、時折にじむ涙をぬぐい、無表情に淡々と動くのみ。

それは、牧場内の誰もがそうであり、知らず知らず、ハービンの話題を避けていたように思います。

そして、土曜日。競馬の日。

心理とは不思議なもので、1頭の生産馬が出走を予定していましたが、正直、私は、まったく勝てる気がしませんでした。

「また負けちゃうんだろうなぁ・・・」

いつも前向きだった心が、完全に後ろを向いてしまっていました。

とある研修会参加のため、車で子供と外出していた私が、携帯電話を忘れたことに気付いたのは、午後になってから。

むろん競馬のことは、すっかり忘れ・・・・。

別の用事のために、やっとの思いで公衆電話を探し、家へ電話をかけると、「勝ったよ」の声。

さっきまで、オーナーと電話で話していたと、少し明るくなったリーダーの声を聞き、私の心にもポッと灯がともりました。

実は、亡くなったハービンジャー牡馬は、そのオーナーの所有馬。

すでに仔馬の死は伝えてありましたが、損失を考えると、私たちはいつ怒鳴られてもおかしくない状況でした。

リーダーが遠慮がちに送った”優勝お祝いメール”の後にすぐ、口取りをされたオーナーから明るいトーンの電話があったらしく、そのお心の広さに、ただただ救われました。

オーナーにも、トレーナーにも、感謝の気持ちしかありません。

そして、なんでしょう・・・。不思議な感覚です。

生まれ故郷の牧場にいる人間たちの窮地を、遠くから、ふわりと救ってくれたセレーネ。

彼女にも、感謝の気持ちでいっぱいです。

悲しい事実にふたをすることは出来ません。私たちは、次に生かすと心に誓い、這い上がるのみ。

今、だんだんと心の整理がついてきています。
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コメント
この記事へのコメント
こんにちは。いつもブログ、楽しみに拝見しています。
ハービン君、本当に悲しいことになりました。でもきっと彼はこの風の牧場に生まれてきて良かったよ!と天国でみんなに話していると思います。
たくさんの愛情をもらったからです。旅立つのは早すぎたけれどやっぱりありがとう!そう言ってくれていると思います。
2012/05/02(水) 20:22 | URL | ごんすけ #-[ 編集]
こんにちは中田次郎と申します。私のような競馬ネタブログとは趣が違いますが、素晴らしいブログですね。また参考にさせていただきます。よければ私のブログも見に来て下さい
2012/05/03(木) 07:22 | URL | 儲かる競馬予想の探求者 中田次郎 #-[ 編集]
ハービンくんが、天に召されてしまったのですね…。(;;)

生き物を相手にしていると、どうしても生と死は避けられないものですが、何度経験しても別れはつらいですよね。

実はセレーネちゃんの勝利の後、更新がなかったのでこれは何か悪い事がおこったのでは?と、妙な不安を覚えていました。
まだ出産を控えているお母さん達がいるはずだから、また死産だったのかしら?なんて心配をしていたのですが、まさかあの可愛くてやんちゃなハービンくんが亡くなったなんて…。

心より、ご冥福をお祈り申し上げます。m(__)m

そしてyosshieさんもブログを書くのがつらかったでしょうね。
でも、悲しい事も知らせて下さって嬉しかったです。
ありがとうございました。
私は一読者に過ぎませんが、勝手にteam yosshieの応援団だと思っていますので、どんな事でも知りたいです。

このブログのおかげで馬の事をたくさん知ることが出来ました。
1頭の競走馬がデビューするまでには、たくさんの人がかかわり、大変なステップをたくさん越えてやっと競馬場に姿を現す事が出来るんだと知り、パドックを周回する1頭1頭の馬たちがみんな輝いて見えました。
応援する馬が増えて、競馬がますます楽しくなりました。
同時に厳しい現実もたくさん知ることになりましたが、私はこのブログに出会えて本当に良かったです。

ハービンくんは旅立ってしまいましたが、きっと天から仲間たちの事を見守ってくれると思いますよ。(^^)

そしてお姉ちゃんやお兄ちゃん、ハービンくんの分もがんばってね!!

でもお母さんはこっこを探して泣いていませんか?
お乳が張って痛くないのかな?
クロちゃんも元気になりましたか?

みんなが元気に、毎日を過ごせますように!(-人-)
2012/05/03(木) 08:21 | URL | michi #BFJTYZbE[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2012/05/03(木) 09:32 | | #[ 編集]
いつも更新楽しみにしていましたが、最近なかなか更新されずどうしたのかな、と思っていました。

仕事の休憩の合間にハービン君の訃報を知り、涙が出るのをこらえながら読ませていただきました。

あんなに可愛い、これからの成長が本当に楽しみだったハービン…牧場の方にとっては家族同然の仔。悲しみは相当のもの…ですよね

でも、こういったことが現実にあるということをもっとたくさんの競馬ファンの方に知ってほしいです。そのためにはこういったブログが本当に必要だと思います。

これからもずっと応援してます。牧場の皆さん、そして母馬の心の傷が癒えることを祈っています。そしてハービン、また元気に生まれ変わってきてね。
2012/05/03(木) 20:31 | URL | hana #-[ 編集]
ありがとうございます。
楽しみにしていただいているのに、悲しい報告をお届けすることになり、申し訳ありませんでした。
温かいお言葉をいただき、救われます。
考えるたびに悲しさがよみがえりますが、短い間だけでも彼に出会えたことに感謝したいと思います。
彼の記憶は絶対に消さず、残しておきたいと思います。v-22
2012/05/08(火) 21:14 | URL | team yosshie #uvrEXygI[ 編集]
ありがとうございます。
競馬予想に関しては、まったくお役に立てないブログですが、競走馬に興味を持っていただければ幸いです。コメントをいただき、ありがとうございました。v-22
2012/05/08(火) 21:34 | URL | team yosshie #uvrEXygI[ 編集]
本当に、ご心配をおかけしました。
正直なところ、その時はブログをまとめて閉じてしまいたい気分でした。
でも、それでは何にもならないことに、今となって気付いています。

ブログを開設してから、仔馬を紹介しながら「もしこの仔が途中で死んでしまったらどうしよう」という不安を何度か覚えました。
牧場の評判を落とすことにもつながりますから、私たちにとっては、それが一番恐ろしいことでした。
でも逆に、多くの方に仔馬を公表することで、牧場の中でも良い緊張感が生まれていたと思います。
病気の兆候があれば、早めに見つけ処置を施し、「みんなに見られているんだから、しっかりやらないと」と、自分たちが安穏としないよう、背筋を伸ばして仕事をしていた気がします。
それでも、防ぎきれない事故がありました。
それが、生産牧場の現実でもあると思います。
周りでも、難産による死、奇形、病死、事故死など、いろいろと伝え聞きます。
牧場もオーナーもそのリスクを背負った上で、この仕事を続けています。
今回は、一般の競馬ファンの皆さんにも、その事実をお伝えすることになり心苦しかったのですが、michiさんのように、競走馬に対する理解を深めてくださった方もいたと思うと、書いて良かったと改めて思います。
たくさんの励ましのお言葉をいただき、本当にありがとうございました。
守れなかった命に頭を下げ、これからも彼らのありのままの姿を綴っていきたいと思います。v-22

2012/05/08(火) 22:55 | URL | team yosshie #uvrEXygI[ 編集]
ありがとうございます。
心強いメッセージをいただき、感謝しています。
心の傷を表現するというのは、本当に辛いですね。
セレーネの勝利に背中を押され、整理のつかなかった心をなんとかまとめました。
「あの仔はいつも私たちを助けてくれる・・・」ふと、そう思いました。
不思議で、また深い世界です。
馬たちとの絆を感じながら、人と人との絆も感じています。
いつか大きな喜びにつながると信じ、頑張っていきます。v-22
2012/05/08(火) 23:14 | URL | team yosshie #uvrEXygI[ 編集]
お気持ちを蒸し返すつもりはないのですが遅ればせながらのコメントで失礼します。^^;

私たちもブログを読みショックでしたが 実際深く関わってこられていたチームYOSSIEさんの心の傷を思うと
言葉がみつかりません。

でも今も毎日たくさんのお馬サンたちの生活を支えておられてるチームYOSSIEさんに
セレーネちゃんも励みになる頑張りを見せてくれてますよネ♪

明日デビュー戦を迎える事が出来る弟フェイト君を
まるで祝うかのように 自らも翌日のUHB杯に出走!!

なんだか勝手に心があつくなってしまいます(yωy*)
ディープ姉さん これからも頑張れ!
2012/06/08(金) 21:33 | URL | 京都はんなり #-[ 編集]
フェイト君を『弟』と言ってしまっては間違いですよね^^;
実際のお姉さんはシルエットですから^^;

でもでも・・・ファームの関係馬の周りで
いつもセレーネは頑張ってる気がします♪ これからも活躍を見守りたいです。
2012/06/08(金) 21:51 | URL | 京都はんなり #-[ 編集]
励ましのお言葉、ありがとうございます。
辛い思い出も忘れてはいけないことですが、それを糧に前を向くしかありません。
あの時の思いを次に生かす・・・それが私たちにできる彼への償いだと思っています。
フェイトは、見事に勝ってくれました。
セレーネは、体重減を見て、ぎりぎりかな・・と心配した通り、少し差がついてしまいました。
今は、放牧に戻ってきています。(育成牧場へ)
また、体を立て直して、張り切って走ってくれると思いますよ。v-22
2012/06/14(木) 21:48 | URL | team yosshie #uvrEXygI[ 編集]
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