その夜のこと

ここでは、「その夜のこと」 に関する記事を紹介しています。
 生後2週間が経った、ロードカナロア牝馬。

4・中旬・歯型
 

顔の傷跡は、生後3日目頃、新米母さんに噛まれて、ついたもの。

少々荒々しい扱いを受けながらも、元気にすくすくと育っています。

4・中旬・カナちゃん
 

乳の出が良くなったのでしょうか。肉付きも良くなりました。

4・中旬・びゅん
 

母の小さい頃と同様、人懐こいタイプではありませんが、母が来れば、こうしてやって来ます。

4・中旬・ぺた
 

土手には、ツクシ。

4・中旬・ツクシ
 

放牧地には、ヒバリ。

4・中旬・ヒバリ
 

北国の動植物たちは、春の日差しを受け、加速度的に、成長を続けています。

6日前、牧場に、また心痛む出来事がありました。

予定日を1日過ぎた繁殖牝馬が、夜になって出産の兆候。

今か今かと待つものの、いっこうに分娩が進みません。

リーダーが胎児を探ると、通常ならあるはずの前肢がなく、頭だけしか触れませんでした。

すぐに獣医さんを呼び、獣医さんは、即、診療センターへ電話。

普通、胎児は、前肢を伸ばし、回転しながら出て来ます。

その肢が折りたたまれたまま、という状態。

当牧場では、初めてのことでした。

毎年、どこかで、体に問題がある仔馬が生まれたという話は聞いていましたが、「まさか・・・」という不安。

「いや、ひっかかっているだけで、無事に出すことが出来るかも・・・・」という、小さな希望。

とにかく急がなければ、このままでは、胎児も、母馬も助けることが出来ません。

リーダーとスタッフが馬運車で出発した後、私は、乗用車で後を追いました。

午後11時前、到着。

暗闇の中、明かりのついたセンターの内部だけが、外からでもはっきりと見えました。

獣医さんたちの姿。

枠場に入っている、母馬。

現場の緊張感が伝わったため、中に入ることはやめ、外から見守ることにしました。

「なんとか、無事に出てくれれば・・・」と、切に願いながら。

ところが、枠場で、試行錯誤した後、事態は進展せず、リーダーが、紙にサインを求められている様子。

全身麻酔の承諾書のようでした。

そこから、馬を、奥のクレーンのある場所へ移し、処置開始。

相当な時間を費やし、なんとか仔馬を引っ張り出すことに成功したようでしたが・・・・。

寒さのあまり、馬運車の運転席に座り、事の次第を見守っていた私には、仔馬の姿までは見えません。

しばらくすると、一輪車を押したリーダーが出て来ました。

急いで、馬運車から降り、駆け寄ります。

「生きてたけど、肢が曲がってて。立てないから、ダメだった・・・」

「お母さんは?」

「なんともない」

安楽死処分された仔馬を積んだまま、奥にある解剖場へと、消えていきました。

腕節(まえひざ)の部分が、120度しか伸びないという、拘縮症候群。

歩行はおろか、起立も出来ないため、生きていくことが出来ません。

母馬が助かっただけでも、良しと思わねば・・・。

自分を納得させようとしましたが、帰りの道中は、ため息ばかりでした。

母馬は、初産。

「せっかく、お腹の中で、ここまで大きくなったのになぁ・・・」

楽しみにされていたオーナーさんの顔が浮かび、なんとか出来なかったのかという思い。

もやもや。

納得しないと気が済まない性質なので、調べるうちに、アメリカ・ケンタッキー州の獣医師の報告にたどりつきました。

仔馬の拘縮症候群は、ケンタッキーでも、もっとも一般的な先天異常であること。

重度であれば、無事に分娩されても、立ち上がって乳を飲むことが出来ないため、一般的には安楽死処置となること。

遺伝的要素が強いと考えられること、など。

今回の母馬は、アメリカ生まれの外国産馬で、その母方の出産記録については、簡単にはわかりません。

もし、遺伝が要因ならば、この先々の心配も残ります。

考えさせられる経験でした。

目の前で起こったことには、何か必ず理由があります。

悩み、考え、改善策を探していくこと。

嘆いてはいられません。この春は、学ぶことばかりです。


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コメント
この記事へのコメント
初めて聞く病名でした。
まだ原因や予防法が確立してないようですね。
母馬さんのお乳を飲むこともなく亡くなってしまった仔馬。
母馬さんが無事だったのがせめてもの幸いでした。
改めて無事に生まれてくることのありがたさ、
生産牧場さんの大変さを感じずにはいられません。

2016/06/14(火) 20:47 | URL | aqua #hPjq5csI[ 編集]
今年のお産はどうしてこんなに悲しいことが続くのでしょう。胸が痛みます。
「どうか無事に生まれてほしい」と願うのは人間も馬も同じ。重い障害をもって生まれても人間なら育てられるのに、馬はそれすら叶わないなんて・・・・。
大きな悲しみの中でも納得するまで調べられてる姿に頭が下がります。
2016/06/15(水) 13:42 | URL | ラベンダー #8c6RAryI[ 編集]
長く生産を手掛けていらっしゃる吉田ファームさんでも、初めての出来事とのこと。
馬が一頭生まれて、サラブレッドとしてデビューするまで、本当にさまざまな困難があるのだなと改めて感じます。
吉田ファームの皆さんも、突然の出来事で大変でしたね。お疲れさまでした。
遥々日本へ来てくれたお母さん馬、初めての子どもを失い、可哀想でなりませんが、先ずはお母さんが無事で良かったです。
2016/06/16(木) 05:57 | URL | ダン #-[ 編集]
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