辛く長かった1週間~中編

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 3日の早朝より、ダンカーク牡馬の”乳母”捜しが始まりました。

頼みの、自分の牧場所有の乳母は、まだ出産前。

普段から連絡を取り合っている”乳母”牧場さんも、産んだ馬はすべて出払っているとのことで、出産待ち。

困っていたところに、近くの”乳母”未経験馬の話が舞い込んできました。

昨年、初めて出産し子育てしたというハフリンガー。

気性的な面で未知数らしく、「ダメなら返してもいいから」と、所有者の方に親切に言っていただき、ありがたい思いで、借りることにしました。

根気強く接すれば、なんとかなるはず・・・・。

もちろん、途中で返す気などありませんでした。

到着するという午後4時までの間、ダンカーク牡馬のお腹を空かせるために、それまで与えていたミルクを控えます。

時折、馬房をのぞくと、すぐに人間に寄ってきて、とにかく舌を動かし、なんでも吸い付こうとしました。

その力の強いことといったら!

「これが、まさに生命力!」 ひしひしと、実感。

しかし、人に懐きすぎないよう、すぐに姿を隠します。

ペットではない。競走馬になるために、人間では教えられない、群れでの生活を、これから学んでいくのです。

乳母との生活がスムーズに運ぶよう、何かと気を配りました。

そして、リーダーは、毎年、他の牧場に乳母を貸している経験から、手早く、馬房の準備を始めていました。

馬房に枠場を作り、さらに畳を設置します。

仔馬の顔が入るだけのスペースを切り取った、古畳。

天井からは、カーテン。

すっかり準備の整った午後4時半。そのハフリンガーがやって来ました。

生後2週間の自分の仔から離されたばかり。

馬房に入ると、淡々と目の前の乾草を食べ始めたため、そこから、ダンカーク牡馬の乳を飲む訓練が始まりました。

これがまた、一苦労。

使っていた哺乳瓶で、乳母の乳房まで誘導し、そこに行けば、母乳が飲めることを教えますが・・・。

一度、哺乳瓶で飲むことを覚えた仔馬は、そう簡単に、乳房に吸い付きません。

1人が仔馬の体を押し、もう1人が哺乳瓶で誘う。

それを何度も繰り返し、疲れてきたら、一度寝かせて、再チャレンジ。

見ている方は、ああだこうだと、ぶつぶつ。

約1時間が経過した頃、ようやく初めて成功し、それからも、根気よく誘導を続けた結果、夜7時過ぎには、ひとりで吸いに行けるようになりました。

「もう大丈夫!」

しかし、まだ手放しでは喜べません。畳で仕切られている乳母が、時折、蹴ろうと肢を上げるのです。

自分の仔ではないということを、ちゃんとわかっていました。

ベテランの乳母とは、違います。

何しろ、初めての経験。母性本能に期待したものの、やはり一筋縄ではいかない様子でした。

こちらも、ベテランの”乳母”牧場さんに、こまめに連絡し、アドバイスを受けます。

ハフリンガーの場合、乳母に向く馬と向かない馬とで、五分五分だとか。

すぐに飲ませるようになる馬や、3日かかる馬や、1週間かかる馬、やめた馬など、個体によってさまざまらしく、ここで悩んでいる場合ではありませんでした。

とにかく、うまくいくよう、最善の方法を探っていくしかない。

リーダーが、一晩中、馬房の前で、監視。

時折、ドキッとするような音を立てて畳を蹴るものの、なんとか母乳を飲ませてくれる状態になったので、翌朝、カーテンをとりました。

「どう?」「あんまり変わらないね」

見守りを交替した時、ダンカークくんは、すやすやと眠っていました。


3・4日・ダン
 

蹴られそうになりながらも、乳は十分飲めているようです。

立ちっぱなしの乳母もまた、うとうと。

外では、ゴールドアリュール牡馬が、お母さんと一緒。


3・4日・アリュ
 

ロードカナロア牝馬は、背中合わせでごろ寝して・・・。


3・4日・カナ
 

「うん?」


3・4日・カナちゃん
 

当たり前のように思っていた光景が、しみじみ貴重に思えてきました。

起きたダンカークくん。


3・4日・畳
 

バシッと跳んで来る乳母の後肢をよけながら、懸命に乳を飲み続けます。

彼のへこたれない精神だけが、希望でした。


3・4日・ダンくん
 

何の躊躇もなく、乳母の顔辺りに近付いていくダンカークくん。


3・4日・威嚇
 

しかし、鬼のような形相で威嚇され、困ったように下がっていました。

コラッと注意。考えてみれば、彼女だって、我が仔から離され、こんなところに入れられ、やっていられないというところでしょうか。

ニンジンは食べたことがないらしく、口にしないので、人との意志疎通に使えません。

「なんとか受け入れてほしいなぁ・・・」


3・4日・寝る
 

まだ2日目。きっとよくなると信じながらも、心に引っ掛かりを感じたまま、次の日を迎えました。

3月5日。生後3日目となったダンカーク牡馬。

午前・午後と、短時間パドックに放してみることになり、外へ。


3・5日・パドック
 

乳母の気分転換にとも思いましたが、慣れないパドックに、キョロキョロ。

仔馬が近付けば、威嚇。

結局、人間がひき手綱で持っていないと飲ませてはくれず、課題は山積みでした。

この日、ロードカナロア牝馬は、放牧地へ。



3・5日・カナちゃん
 

新米ママのセレーネと一緒に、駆けめぐります。


3・5日・カナ走る
 

アリュールくんは、人懐こくなり、遊ぶのが大好きに。


3・5日・アリュール
 

ぐいぐいと押してくる頭は、まるで岩のようで、ものすごいパワーを感じました。


3・5日・アリュ親子
 

午後から、再びパドックに出たダンカークくん。


3・5日・顔
 

とにかく元気で、所狭しと走り回ります。

転んで泥んこになりながらも、おおはしゃぎ。


3・5日・泥んこ
 

耳をしぼって、それをにらみつける乳母。

不安をぬぐいきれないまま、この日も過ぎていきました。

(後編に続く)
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コメント
この記事へのコメント
見守る事しか出来ないけど
頑張って!!ダンくん!!
頑張って下さい、吉田ファーム!!
乳母さん、ダンくんを
よろしくお願いしますm(__)m
2016/03/17(木) 16:23 | URL | ひーちゃん #bBmFigmc[ 編集]
乳母に育てられる仔馬のことは知ってましたが、こんなに細かく描写されたものは初めてです。乳母牧場というのもあるんですね。

枠場、顔が入るだけのスペースを切り取った古畳、カーテン・・・、頭の中で場面を想像しながら読んでいき、その写真を見た時、ダンカークくんのけなげな姿に心を打たれました。

蹴られそうになりながら必死にお乳を飲んでいる。「お母さん」の顔を確かめに行ったら、鬼の形相で睨まれる。
生まれたばかりの彼に何でこんな試練が・・・・(涙)

カナちゃんやくーちゃん親子の仲睦まじい姿は普通ならほのぼのとしますが、ダンカークくんのことを思うとよけいに悲しくなります。
でもダンカークくんはとても強く賢そうな男の仔に見えます。Yosshieさんたちの昼夜問わずのお世話できっとたくましく育ってくれるはず、頑張って!
2016/03/17(木) 17:16 | URL | ラベンダー #8c6RAryI[ 編集]
スタッフの皆さま、お疲れ様です。

命を扱う仕事は、嬉しいことがたくさんある反面、悲しく辛いこともあるということを改めて感じました。
ただでさえ出産ラッシュで忙しく、気持ち的にも日記を書くような心境じゃないかもしれないのに、
こうして報告していただき、ありがとうございます。

乳母という存在は知っていたけれど、畳で仕切りを作ったりするのは初めて知りました。
こうやって徐々に慣らしていくのですね。
我が子と離されて乳母も辛いと思いますが、ダンカークくんを早く受け入れてくれますように。
2016/03/17(木) 20:52 | URL | ウマノコ #jaewcJm6[ 編集]
ダンカークくんもハフリンガー母さんも頑張ってー!
さみしいよね、でも負けないでー!
スペシャルウィークもそうでしたよね。
ずっとずっとずっとずっと応援してるから頑張って!!

2016/03/17(木) 21:28 | URL | 颯 #-[ 編集]
ダンカークくん、お母さん似のクリッとした目が可愛いです。
2組の親仔の当たり前と思う光景がただただありがたく感じます。
活発なダンくんの姿に、もし母馬さんが生きていたら追いかけるのが
大変だろうな~と懐かしく思い出しています。

ダンくんの子育てで、パワーショウくんのことを思い出しました。
あの時の乳母さんは優しい母馬さんだったんですね。
乳母さんが、ダンくんを暖かく受け入れてくれるようになりますように。
2016/03/17(木) 23:55 | URL | aqua #hPjq5csI[ 編集]
ダンカーク君も乳母さんもスタッフさんたちも、みんな頑張って!!と思いながら読みました。前編では何を書いても安っぽく感じてしまうような気がして、コメントを残すことができませんでしたが、今回は悲しいながらも、ダンカーク君の無邪気さと生きる気力と逞しさに心打たれました。何度怒られてもへこたれない、ダンカーク君、君は強い子だ。乳母さんも自身の子供と離され辛いでしょうね‥。我が子と離され、さあこの子を育てなさいと言われてもすぐにできるはずがありませんよね。でも、スタッフのみなさんの頑張りできっと上手くいくと信じています。ダンカークくん、応援してますよ!頑張って大きくなるんだよ!
2016/03/18(金) 08:13 | URL | ココロ #aZ1d6H5Y[ 編集]
頑張れ!ダンカークくん。
乳母さんも我が仔ではないダンカークくんにお乳をあげてくれてありがとう。
2016/03/18(金) 09:09 | URL | 午年生まれ #-[ 編集]
更新ありがとうございます。母馬を亡くした間もなく次の手を打つ皆様の努力、頭が下がります。以前にアップしていただいたパワーショウや、バトルアステアが乳母と並んでいる仔馬時代の画像を思い出し、どのように自分の仔以外に乳をあげるんだろうと思っていました。鬼の形相の画像を見て、やはり一筋縄ではいかないものなのですね。今後の様子が気になりますが、お忙しい毎日のことと察します。できる時で結構ですから、無理なさらないでください。ちっちゃいダン君を応援しています。
2016/03/18(金) 21:34 | URL | yumiko #-[ 編集]
それしかないです…(._.)
2016/03/19(土) 09:50 | URL | ひじり #-[ 編集]
ダン君にお乳を飲ませるところから教えて、それができても乳母との相性の問題で目が離せないなんて…乳母の気持ちも分かるけど、何とか乗り切って欲しいです。
「ペット」ではなく「競走馬」という言葉がとても重みを感じました。
2016/03/20(日) 10:09 | URL | AFMD #Sm/ug.UM[ 編集]
生まれた時にそばにいたはずのお母さんがいなくて寂しそうな表情だったダンカーク君。乳母のお乳を足を踏ん張って飲む姿や、泥んこで遊ぶ姿は、生死に関わる難産で誕生したのに凄い生命力で感動しました。あんなに素敵な母馬が亡くなったニュースはとてつもなく悲しいですが、ダンカーク君が元気に育って、立派な競走馬になるように!応援します!!
悲しいけど、悲しんでばかりいられないヨッシーさんに、言葉が見つからないのですが、17歳で逝ってしまった母馬も幸せな一生で、ちゃんと意識のあるままわが子と過ごした時間があって、幸せなお馬さんだと思います。あとは産駒達が立派になることを祈ります。
2016/03/23(水) 22:57 | URL | Hase #-[ 編集]
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2016/03/25(金) 15:15 | | #[ 編集]
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2016/03/28(月) 09:05 | | #[ 編集]
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2016/04/01(金) 23:50 | | #[ 編集]
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2016/04/02(土) 00:01 | | #[ 編集]
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2016/04/11(月) 14:17 | | #[ 編集]
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