辛く長かった1週間~前編

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 3月2日。その日は、朝から晴れ渡っていました。

ゴールドアリュール牡馬は、草の山の端っこで、すやすや。

3・2日・くーちゃん
 

ロードカナロア牝馬は、私を見つけて、そわそわ。

3・2日・カナちゃん
 

カナちゃんと遊んでいる間に、アリュールくんが起きて、お母さんにいたずら。

3・2日・いたずら
 

いつもと変わらない風景です。

予定日を4日過ぎた牝馬の乳房が大きくなり、「今日には生まれるだろう」と、撮っておいた画像。

3・2日・出産間近
 

これが、元気な彼女の最後の1枚になるとは、この時、思ってもいませんでした。

午後8時半頃、馬房内をうろうろと歩き始めたため、「いよいよだ」と、リーダーが厩舎へ。

後から、スタッフと私が到着した時、そのリーダーの顔が曇っていました。

「返ってない(胎児があお向けのまま)」

「(胎児が)大き過ぎて、返らない」

「おかしい。陣痛も弱い」

分娩が始まり、白い袋(羊膜)が見えてきているのに、産道を手で探ると、胎児が正常の姿勢になっていないのです。

難産でした。

いつもなら、それでもあきらめず、何度も正常に戻そうとするリーダーが・・・。

獣医さんに電話をかけ、運転免許証を取りに行き、馬運車を横付けし始める姿に、尋常ではないことがわかりました。

私は、ただ好転を期待するしかありません。

いや、大丈夫。今までだって、時と共に、分娩は進んで、無事に生まれてきた・・・・。

獣医さん、到着。手早く、処置が始まりました。

母馬を立たせ、胎児の体をなんとか回転させ、母馬が横になったところで、今度は胎児の肢に産科チェーンをかけ、二人がかりで。

いえ、最後は男四人がかりで引っ張り、午後10時前に娩出。

「生きてる!」

急いで酸素吸入を行い、ヒーターをかけて保温。テキパキとその後の処置も進みました。

難産の場合、胎児がすでに死んでしまっている場合や、時間が経ち過ぎて、途中で命を落とす場合も、十分あるのです。

疲れて横たわったままの母馬の隣で、元気に顔を上げる仔馬は、父ダンカークの大きな牡馬。

3・2日・難産の末
 

そのうち、母が立ち上がり、仔馬も正常だったため、しばらくは安心して見ていることが出来ましたが・・・。

3・2日・牡馬
 

ふと、母馬の体が震えていることに気付きました。

子煩悩な性格なのに、我が仔をなめたのは、数える程度。

表情が硬く、耳をすますと、息も荒く感じます。

大好きなニンジンを見せた時、少し反応し、ほんのわずかだけかじって、やめたのも気になりました。

「おかしい・・・」

幸い、仔馬の方は、自力で起立。

乳房を探し始めた時に、母の容体はさらに悪化し・・・、未明に息を引き取りました。

後でわかったことですが、死因は、盲腸破裂。

分娩時に、仔馬が子宮の中から蹴ったことが考えられますが、17歳という母の年齢も、少なからず関係しているかもしれません。

悲しみにひたる暇もなく、リーダーが、必死でしぼった初乳を、仔馬に哺乳瓶で飲ませ、あるいは冷凍してあったミルクを温めて飲ませ、朝まで。

とにかく生命力が強く、ぐいぐいとミルクを飲む元気な仔だったのが、救いでした。

そして、亡くなった母馬は、病理解剖のため、3日の午前8時半までに診療センターに運ぶこととなり、仔馬は、別の馬房へ移されます。

私は、死後硬直の始まった母の体を、ゆっくりとなでてあげました。

ほんの少し、まだ、温かみを感じます。

「今までありがとう」とつぶやき、彼女の忘れ形見を立派に競走馬にすることを誓いました。

たてがみとしっぽの毛を、少しだけカット。

午前8時。重機を使って、スタッフ総出で、母馬の亡骸をトラックへ。

その時、まるで天から迎えがやってきたかのように、雪が降り始めました。

何も知らないはずのシルエットが、昨日までの相棒を探し、放牧地でいななきました。

1頭で馬房に入っていた仔馬が、トラックの方を向いて、高い声で鳴きました。

皆の願いむなしく、この世を去った母馬は、こうして、牧場をあとにしたのです。

そして、残された大切な命を巡り、もうすでに、次の戦いが始まっていました。

(中編へ続く)
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コメント
この記事へのコメント
フラッシュくんのママだったのですね。
ファストアズライト様
ありがとうございました。
安らかに…。
ダンくん、頑張って!!頑張って!!
生まれてきてくれてありがとう。
2016/03/16(水) 13:03 | URL | ひーちゃん #bBmFigmc[ 編集]
ダンカークくんのお母さん、相当苦しかったでしょうに立ち上がり、初乳を飲ませようとしたんですね。「母馬の体が震えて・・・。」のくだりから、字がかすんで読めなくなりました。

記事からするとフラッシュくんのお母さんですか?シルエットと一緒の写真、凛とした瞳がとても美しかったですね。出産当日の大きなお腹の写真は、後から見ると胸がいっぱいになります。やっと可愛い我が子に会えたのに・・・・。

亡骸が牧場を去る時に、仔馬がトラックの方を向いて高い声で鳴いたなんて悲しすぎます。こんな辛く悲しい出来事を知らせていただき、ありがとうございます。続きも丁寧に読ませていただきます。
2016/03/16(水) 15:07 | URL | ラベンダー #8c6RAryI[ 編集]
子煩悩で常に我が子が心配でガードするお母さんでしたね。
こどもを残してさぞかし無念だったでしょう。
胸が締め付けられます。
命をこの世に送り出すという当たり前のようで常に危険が付きまとう大変な仕事・・・本当におつかれさまでした。
ただただ安らかにと祈ります。
フラッシュ君、ダンカーク君、母はいつも見守ってくれてるよ!
元気に大きくなって、そしていつの日か☆
ずっと応援しています。
ファームの皆様、本当に命を預かる大変なお仕事ですね。そして希望に満ちた素晴らしいお仕事ですね。
頑張って下さい!!
2016/03/17(木) 10:34 | URL | 颯 #-[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016/03/17(木) 20:28 | | #[ 編集]
ダンカーク母馬さん、もう子煩悩な姿が見られないのがとても寂しいです。
出産シーズンになると、6年前のクリスマスイヴにやってきた母馬さんかな~と
考えたりするのも楽しみのひとつでした。
今回のお産で最後の力を振り絞っていた様子には、唇をかみ締めていました。

Team Yosshie様、悲しみを乗り越えて残された仔をいかに育てて行くか・・・。
生産牧場さんのお仕事は夢や希望がある一方で今回のような悲しい出来事もあります。
それをブログの記事にするのは、本当にお辛いことだと思います。
でも伝えてくださったことにとても感謝しています。
応援団も頑張らなくてはいけませんね。
2016/03/17(木) 23:31 | URL | aqua #hPjq5csI[ 編集]
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