9月になって、暑い日が多い北海道。
でも、季節は少しずつ移り変わり、ナナカマドの実が真っ赤に色付いています。
牧場の秋は、別れの季節。当歳は、離乳。1歳は、移動。
今日、その移動の先陣を切って、クロフネ1歳牡馬が、牧場をあとにしました。
昨日は、夜間放牧をやめ、馬房でゆっくり休養したクロフネくん。
早朝からパドックに放され、青空をバックにのんびり・・・です。
鼻筋をなでると、気持ち良さそうにして、あいかわらずの人懐っこさ。
「戦闘モード、まるで無しだなぁ」
これから育成牧場での調教が始まることなど、本人(馬)はまったく知らないのだから、仕方ありません。
出発が近くなり、最後の手入れ。
一年半の間、世話をしてきたスタッフの手にも、力が入ります。
仲間と共に過ごした厩舎の長い廊下を歩くのも、今日で最後。
せり会場への往復で、もう乗りなれた馬運車の暗い車内へ、すっと入っていき、彼の姿は見えなくなりました。
出発した車を見て、いなないているのは、昨日までの友。
エンジンの音にまぎれて聞こえなかったのか、クロフネくんからの返事はありませんでした。
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3日に、1歳馬の削蹄がありました。
今月中に移動予定のクロフネ牡馬にとっては、最後の削蹄。
毎月、お世話になった装蹄師さんと、この日でお別れです。
セレクションセールに出る前は、特別に彼のためだけに来てもらいました。
馬にとって、蹄の管理は欠かすことができず、素人では絶対に出来ない職人技のようなもの。
400kg近い体重をバランス良く支えるために、微妙な調整が、ものをいう世界です。
一頭につき、四本。
たくさんの道具を使い分けながら、てきぱきと整えていく様子には、ため息が出ます。
途中、小休止を入れながらの作業は、二十頭近くの1歳馬を終えるのに、3時間近くかかりました。
「この仕事って、絶対こうだってのが、ないんだよね。だからやめられないんだ」
と、スタッフと笑いながら話していた言葉が耳に残りました。
奥が深い仕事。難しい馬ほど、後に走ってくれると嬉しいし、やりがいがあるのだそうです。
削蹄が終了し、放牧前の飼いつけ時間となりました。
「まだかなぁ・・・」と、顔を出して待っているクロフネ牡馬。
そして、こちらは、サクセスブロッケンの妹、サクラバクシンオー牝馬。
兄は、先ほどの装蹄師さんにずいぶんお世話になったことを覚えているでしょうか。
もうすぐ旅立ちの時を迎える1歳馬たち。
たくさんの人の夢を背負って、次のステップへと踏み出していきます。
今日も雨。二番牧草の収穫をそろそろ始めなければならないのに、なかなかスタートできません。
「こっちの方がおいしいぞ!」と、その二番牧草を、顔を伸ばして食べているのは、クロフネ1歳牡馬。
セレクションセールで売れた後、育成牧場へ移動するまでの間、また元の仲間と共に生活しています。
昼夜放牧にも耐え、体はまだまだ成長中。
人間好きも変わらず、すぐに寄って来ました。
広い放牧地で、こうして仲間とじゃれあうのも、あとひと月足らずで、終わり。
わんぱくネオユニヴァース当歳牡馬のお兄ちゃんだけあって、友達にちょっかいを出すのは大好き。
でも、育成牧場へ移動すれば、人間とのやりとりのみで、他馬と接触することは、ほぼなくなるでしょう。
これからが、競走馬になるための、本当に厳しい世界の始まり。
顔の模様も、毛色も違う仲間たち。
それぞれ、進む育成牧場、厩舎が違えば、再び会うこともなくなります。
たくさんの枝に分かれた、分かれ道にいよいよ近付いてきた、1歳馬。
こうして、皆が横一線に並んで、スタートを切る日がやって来るでしょうか。
それは夢のまた夢。
私たちは、皆が無事に成長し、それぞれが競馬場で走る日を、ただ待ち望むのみ。
長い長い時間の始まりでもあります。
わんぱくネオユニヴァース当歳牡馬のお兄ちゃんは、無事に売れました!
本当に良かったです。
曇りのお天気は、なんとか昼までもってくれ、比較展示は前日と違って、大盛況。
クロフネくんは、購買登録者の方々に、何度も「歩いてみせてくれ」と頼まれ、一時も休まずに、動いていました。
「これは、もしかすると、買ってもらえるかも・・・」
空の雲行きとは反対に、私の心にわずかな光が射してきたのは、この時です。
午後1時から始まったセリは、セレクトセールと比べると、低めの価格で落ち着き、派手さはありませんでした。
それでも、希望価格で売れれば、万々歳。
欲を出せばきりがありませんが、この時代に、馬を一頭売ることは、牧場にとっては大変なことなのです。
雨・風が強くなる中で、目の前に現れる馬たちが、みんな売れてくれればいいのに・・・と、思わざるをえませんでした。
午後5時過ぎ。クロフネくんが、セリの順番を待つ、周回場へと、出発。
屋内のパレードリンクへ入ると、もうあと数頭で、番が来ます。
緊張した面持ちのクロフネくんに、心の中でエールを送り、セリ会場最上段へと急ぎました。
あっという間に、入場。私のドキドキは、最高潮に達しましたが、「1200万!」というかけ声と共に、力が抜けていくのが分かりました。
「売れてる・・・みたい」
最終的に競り落としてくださったのは、著名人の方でした。
明日は、偉大な息子を生んでくれた、ネオ母さんに、報告しなければいけません。
いえ、偉大な息子になるのは、走ってからの話。
これからが、クロフネくんの正念場です。
いよいよ明日に迫ったセレクションセール(一歳)。
今日は、前日展示が行われるので、わんぱくネオユニヴァース牡馬くんのお兄ちゃん、クロフネ牡馬一歳は、会場へ向けて、出発しました。
今日まで、他馬と分けて、セリのための馴致を行ってきた彼。
遅生まれながら、体は自然と出来上がってきて、無理なく、この日を迎えることが出来ました。
午後からの展示を前に、私も会場へ。
本番を明日に控え、さすがにメインの駐車場はガラガラでしたが、馬産地日高で行われる市場とあって、会場は、牧場関係者で、熱気ムンムン。
当牧場のクロフネくんにも、近隣からたくさんの応援部隊が駆けつけてくださり、ありがたい限りです。
比較展示の時間が近付き、馬房前で、準備中。
ここまでは、落ち着いていたクロフネくん。四十頭近くが並べられる展示場に出ると、少々テンションが上がってしまい、私もハラハラ・・・。(うちでは、マイペースくんなのに・・・)
周辺を歩かせているうちに、なんとか静止出来るようになりました。
購買者らしき方々が、何名か、入念にチェックに来られる中、30分の展示時間終了。
さすがに、セレクションセールは、選ばれた馬だけのセリです。
血統的にも魅力的な馬が多く、牧場では「完璧」と自信を持って仕上げたクロフネくんも、その中で、注目を集めることが出来たのか、不安が残りました。
明日は終日、雨の予報で、馬にとっても人にとっても、大変な一日となりそう。
でも、これまで手塩にかけて育てた馬、どうか良い結果が出ますように・・・と、祈る思いで、会場をあとにしました。
今晩、馬と人間一名は、会場に泊まりです。





































